大河内メンタルクリニック院長ブログ 折り折りのこと

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zoom RSS 院内講義(抜粋)8

<<   作成日時 : 2016/10/02 21:00   >>

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これまでに述べてきた「自我と自己自身との関係」は、「現実の社会的自己」とは違って理念的な人間の在り方に関してのお話です。そういう、いわば非現実的な話を持ち出す理由は、現実の「社会的自己」が行き詰った状況を踏まえて、どのようにすれば自分の姿勢を立て直すことができるかを模索するところにあります。それは、私の立場では患者さんの問題であり、それを踏まえた私自身の課題でもあります。
更にいえば、現実の社会的生活での行き詰まりは、理念的な自己の在り方の筋から大きく逸れているということが想定されるからでもあります。
そのことについては、社会的自己を主宰するのが自我であることと、理念的自己の主宰者が「内なる主体」であると捉えるべきであることとが基礎になっての見解です。
前者、「社会的自己」の在り方をめぐっては、主に他者との関係での自己といったものが、本人の意識上の問題になっていると考えるべきものです。
そして、後者は他者との関係ではなく、いうならば自己自身といったものとの関係が問題になります。この意味での自己自身というのが、いま述べた「内なる主体」であり、それはユングがいう元型としての自己と同じ意味を持っています。
更に参考までにいえば、かつて「神々が生きていた」ギリシア時代の哲学者であるソクラテスが、社会的自己としての人間を「囲いの存在」と呼び、そこには番人がいる、と語っていることにも通じます。「内なる主体」は、ソクラテス流にいえば、「神の番人」ということになります。
こういう話は時代錯誤だと不快な思いを持つ人もあることでしょう。しかし、考えてもみてください。我われ人間が「何でも知っている」などということはあり得るでしょうか? むしろ「何も知らない」という方が実態というべきではないでしょうか。知らないことが無数にある上に、それどころか、われわれ人間には知り得ない世界、埋め尽くすことが不可能な無限の空白の世界があるのは、否定しようもない現実です。
そういう何と呼べばいいのか分からない領域は、自我の能力が及ばない世界です。従って、それは、「名づけ得ぬ世界」としかいいようがないのです。
我われが、ふつうに「名をつけている世界」は、自我が有効に機能する世界である、という意味を持っています。それは、つまり社会という「囲いの世界」です。
裏を返せば、自我の機能が無効なのは「囲いの世界」の彼方になる「名づけ得ぬ世界」ということになります。
何かに名を与えるのは、それぞれの「私」です。それは、何事かに名を与えることによって「私の世界」の一員であるという存在確認の意味を持ちます。そうすることで安心が得られます。
そして、他者たちは、その「私の世界」の「共同存在者」として「私の世界」に参入している、あるいは参入可能であるという性格を持っています。そういう性格が、それぞれの「私の世界」にはあるので、社会的存在には不可欠な人と人との関係が成立する前提になっています。
こうした話は、つじつま合わせの例え話ではなく、「私」という現に存在していることが疑いようもない現実から出発して、その「私」なるものが存在していることに必然づけられて導き出されることどもということです。そのように意味の連鎖をたぐっていくという問題です。A−1という現実があれば、そのことから自ずからA-2という関連が導き出される、というふうに話が進み、それらの意味の連鎖の総体として、「私の世界」が構築されているということです。
「私」の現実世界は、そうした意味の連鎖で成り立っています。
そのようにして、自我を中核として成り立つ「私の世界=社会的存在」の一員であることを個々に確認する意味を持っているのが「名づける」という行為です。それは同時に、他者たちも、私の共同存在者として私の世界に参入してくる性格のものなので、その名づけ得たモノたちは、他者たちと共有可能になるということです。
繰り返せば「私」がそのように行為できるのは、自我に拠る存在であるかぎりでの話です。それは「社会的存在」としての「私」であることを意味します。
このことは、ただちに、社会的存在という「囲いの世界」の彼方にある世界が名指しされているのです。
その「彼方の世界」は、現実には、死というタブー視されている言葉を冠せられて不問に付されているのです。
('16/10/3)




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